「文學界」2006年10月号 [掲載情報]
連載中の文芸時評「文学まであと少し」の第7回目が載ります。
題名は「スピードを落とす」。
雑誌発表以外のものでは川上弘美さんや長嶋有さんの近刊、歌人の東直子さんの小説集『長崎くんの指』(マガジンハウス)なんかについて触れています。
またありがたいことに、武田将明さんによる『新約太宰治』の書評が載っています。
それほどたくさん書評というものを書いてもらったことがあるわけではないのですが、書き手が追いつめられるという感じの迫力のある書評を初めて読みました。
疑問点をあげながら、その上で好意的に評してくださっているのですが、なんて言ったらいいんだろうな。
三島由紀夫がどこかで書いていたと思うけど、保田與重郎の評論を読んであまりにも面白そうだから、そこで取りあげられていた作品を読んでみたら、ことごとくつまらないものばかりだったという話がある。
これはまあ、批評の自立を示すエピソードだけれど、いまの場合、武田さんの書評が「保田與重郎の評論」に当たり、僕の『新約太宰治』が「評論に面白く取りあげられたけど実はつまらない作品」というのに当たる。
もしそうだったら困るなあ、というような気を著者に起こさせるほど、批評の力にあふれた書評でした。評者に感謝します。
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