読売新聞2006年10月24日 [掲載情報]
今年の4月から3ヶ月に一回、読売新聞文化面の「注目の評論」というのを書いてます。
一週間たったので、全文転載(いいよな)。
《遠藤周作が没して今年で十年になるが、加藤宗哉『遠藤周作』(慶應義塾大学出版会)は作家自身をよく知る著者による渾身の評伝である。作品自体について語ることを自制しながら、作家にまつわる事実からその文学の真実に迫っている。大きな発見は、没後に明らかになった留学生時代のフランス人女性との恋愛が、作品世界に強い痕跡を残しているということだろう。著者にしか書けない側面で作家の本質を抉り出すとともに、読者に遠藤周作の作品を読む喜びも残してある気配りが光る。
いま文学について魅力的な批評的散文を書いているのは、残念ながら文芸評論家ではなく小説家である。それはポストモダン以降の文芸評論が文学に興味を失ったからかもしれないし、商業的な理由から現代文学で小説的なものが肥大したせいかもしれない。そのことを示す保坂和志『小説の誕生』(新潮社)は、批評の言葉で手探りできる「小説的なもの」からはじめてそれを受けつけなくなる「小説」まで近づくことをくり返す。その近づくときの言葉の感触を、文学と呼ぶべきだろう。
日本のマンガやアニメを愛するアメリカ人が、アメリカのオタク文化について縦横に論じたパトリック・マシアス『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』(太田出版、町山智浩編訳)が刺激的だ。細かな話の背後から、国内では不遇なオタク文化が、世界が手を焼くアメリカのマッチョ文化を解体する力をもつという事実が浮かびあがる。》
ぜひ手にとってみてください。
「遠藤周作」読みました。
ある意味では周作氏の小説を読むよりおもしろかったです。
周作氏は天国でクシャミしてますかね。
私もカトリックですが、
周作氏のような問題意識はあまりありませんでした。
でも晩年の医療現場への発言や
闘病生活には頭が下がります。
by 蛭田 幼一 (2006-12-02 17:21)